黒と紫の大国主命の衣裳と五行五色の考察

紫と黒の大国主命

成羽や井原など備中地方の備中神楽の大国主命の狩衣(かりぎぬ)の色は、そのほとんどが紫色である。

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しかし、岡山県北部の新見市の新郷神明社、そして千屋保存会の大国主命は狩衣が黒である。

また、陣羽織の肩が張り出していたり、頭巾の色が違うなどの特色がある。

大国主

隣接する広島県庄原市の比婆荒神神楽、鳥取県日野郡江府町の下蚊屋荒神神楽保存会明神社も同じく黒である。

荒神神楽は修験の地に栄えた

備中神楽は古くは荒神神楽と呼ばれていた。

この荒神神楽は、古代製鉄および修験道の伝承地に古くから伝わり、実際に修験者が伝えていた時期もあるという。

五行神楽と五色

荒神神楽の演目の中で古くからあるものに、五行神楽というものがある。

五行神楽の中で五郎王子は語る。

「地体の五行の神様と申し上げますなれば、これらは木の神であり、火の神であり、金の神であり、水の神であり、土の神である。色にいたしましても、五色、五原色、五つの原色がございます。」

木が青、火が赤、金が白、水が黒、土が黄とされている。

五行思想では、水、火、木、金、土の順に玄微なものから顕著なものに姿を変えるとされ、この順を色になおすと、黒、赤、青、白、黄の五色となる。

この五色であるが、時代とともに紫、赤、緑、白、黄へと変化する。

間色として嫌われた紫が、やがて高貴な色として扱われるようになり、黒の代わりに紫が使われるようになった。

さらに、仏教で紫を尚ぶことから、後世の中国、日本ともに紫を最上位の色として、五色をその下とする考えがあった。

大国主命は国譲という演目に出てくるのだが、これは江戸時代末期に神能として作られ、明治期に広まった。

神能の衣裳には、それ以前からあった五行神楽や、五色の影響もあるのだろう。

五行思想では水であり原初である黒、そして最上位の色である紫、大国主命は、最も貴い神として、紫や黒の衣裳をまとうのではないだろうか。

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